今だからこそ考えたい、従業員のメンタルヘルス対策

2021年 05月21日

「ストレス社会」の中にあって、従業員のストレスケアやメンタルヘルス対策に積極的に取り組む企業も多くなっています。
特に最近では、新型コロナウイルスの影響でテレワークや在宅勤務の導入など働き方が大きく変化しており、メンタルケアの重要性が見直されています。
従業員の精神面の不調はモチベーションの低下や生産性の悪化、さらには優秀な人材の流出をも招く恐れがあります。そこで今回は、職場におけるメンタルケアについて、基礎から解説いたします。

テレワーク・在宅勤務で生まれた新たなストレスへの対策を

緊急事態宣言がたびたび発令されるなど、新型コロナウイルス感染症の流行はなかなか収まる兆しを見せません。

労働環境も大きく変化し、テレワークや在宅勤務といった今までとは異なる新たな働き方を導入する企業も増えました。こうした動きは、働く人たちのメンタルにも大きな影響を及ぼしています。慣れない在宅勤務によるストレスで、心身のバランスを崩してしまう人が増加しているのです。

テレワークによるストレスの原因としては「生活リズムの変化」「人と会わないことによる孤独感」「成果に対するプレッシャー」「家庭内の軋轢」などが考えられます。
また、社内の直接的なコミュニケーションが減少したことで、上司や同僚がストレスを抱えている社員の存在に気づきにくいということもあります。

これまで、多くの企業でストレス対策としてストレスチェック制度などを導入し、成果を上げてきましたが、こうした局面を迎えている今、経営者はより時代にあった対策の実施が求められているのです。

「コロナうつ」に対するメンタルケアも必要に

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるう中で、「コロナに感染してしまったらどうしよう」とか「このまま不況が長引いたら、この先どうなってしまうのだろうか」といった不安を多くの人が抱えています。

急激な環境変化に伴って、これまでに経験したことのないような社会的な不安やストレスが生まれているのです。こうした不安が原因となり、気分が落ち込むなど鬱の状態になることを「コロナうつ」と呼びます。

医学的な定義はありませんが、自粛生活が長引いていることによる自粛疲れ、将来への不安、感染への恐怖などネガティブな感情が増大することで、精神に不調をきたしてしまう症状のことを指します。
企業としては、これまでのメンタルヘルス施策に加えて、こうした「コロナうつ」に対するメンタルケアも重要な課題となってきています。

厚生労働省がすすめる4つのケア

厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で、メンタルヘルス対策を効果的に進めるために必要な次のような4つのケアを推奨しています。この指針を参考に、会社のメンタルヘルス対策を、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。

(1) セルフケア

「セルフケア」とは自分自身で行うケアのことです。自らの身体や心の状態を把握し、変化に気づき、予防や軽減対策を自らが行うことを目的としています。
企業としては、これを支援するために、従業員にセルフケアに必要な正しい知識と情報を提供することが求められています。
具体的には、下記のような施策が必要です。

  • メンタルヘルス対策の研修会の実施
  • 社内広報などでの積極的な情報発信
  • 自己で確認できるストレスチェックツールの提供

(2) ラインによるケア

「ライン」とはスマホアプリのLINEではなく会社の上下関係を指しています。管理監督者による日常的なケアのことです。
上司は部下に残業や遅刻が増えていないかなど出勤状態の確認を怠ることはできません。また、部下の日々の小さな変化にも目を配ることが大切です。さらに、部下からの相談に対応することもケアとなります。
この他、職場環境の改善や、メンタルの不調で休職していた部下の職場復帰への支援なども内容に含まれます。
企業としては、こうしたラインによるケアのために、管理監督者向けの研修会を開くなどの対応も必要となります。

(3) 産業保健スタッフなどによるケア

事業所にいる産業保健スタッフによる従業員や管理監督者と連携したケアも重要です。事業所内の産業保健スタッフは、メンタルヘルスケアの基本である「心の健康づくり計画」を実施する際の中心的な役割を担っています。
具体的には、以下の支援を行います。

  • 労働者および管理監督者からの相談に応じる
  • セルフケアやラインケアの研修・教育を行う
  • 職場環境の改善に必要な助言を行う

なお、従業員数50人未満の事業所には産業医の選任義務がないため、産業保健スタッフがいない場合もあります。そのような事業所では「事業所内メンタルヘルス推進担当者」を定めて、人事担当者などと相談しながらメンタルヘルスケアを行う体制を作るとよいでしょう。

(4) 外部のリソースを活用したケア

これは、専門的な知識を持つ機関や専門家によるケアのことです。産業保健総合支援センターや地域産業保健センターへの相談、外部機関の従業員支援プログラム(EAP)の活用などがあります。
研修の相談やカウンセリング、復職支援などのサポートを依頼できるので、人事労務担当者の負担が軽減されます。また、外部の専門家に委ねることで従業員にとっても相談しやすい環境となるメリットもあります。

特に小規模の事業所にとっては、地域産業保健センターなど外部機関の活用は効果的です。
もちろん、外部に依頼する場合でも、専門機関に頼りきりになるのではなく、事業所の担当者や産業保健スタッフが主体となって連携をしていくことが大切です。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の拡大から引き起こされた労働環境の変化や「コロナうつ」などの社会的な不安など、従業員はこれまでになかったストレス要素に直面しています。
在宅勤務で日常のコミュニケーションが減少していたとしても、従業員の変化にいち早く気づける仕組みの整備やメンタルヘルスケアに対する意識のさらなる向上が求められているのです。
メンタルヘルスケアの充実は、従業員の労働意欲を高め、生産性を向上させる推進力ともなります。自社に適したメンタルヘルス対策を確立し、実施していきましょう。

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