製造業の未来を作る、技能伝承のコツとは?

2021年 06月23日

人材不足が深刻化している製造業にとって、技能伝承は今後ますます必要となってきます。しかし、実際にはスムーズにいっていない企業が多いのも事実です。
技能伝承は、製造現場だけの問題ではなく、企業の将来を左右する重要な経営課題です。
ここでは、製造業の技能伝承がかかえている課題と技能伝承をスムーズに進めるためのヒントをご紹介します。

技能伝承が上手く進まない幾つかの原因

技能伝承がスムーズに進まない理由はいくつかありますが、ここでは、技能伝承の主な課題を見ていきましょう。

  • 目先の業務に忙殺されていて、時間的な余裕がない

    熟練技術者は、生産現場の中核を担っており、日々の業務に追われています。そのため、後継者に技能を伝承していく時間が取れないという課題があります。
    また、人手不足の生産現場では、若手や中堅の技術者もそれぞれ自分がこなすべき作業を抱えており、技術を習得するための時間を取ることが難しくなっています。

  • 熟練者と若手とのコミュニケーション量が減っている

    生産現場では、効率化や分業化のために作業が細分化されており、熟練技術者と若手・中堅とが共同で作業する機会が減っています。このため、若手が熟練者の作業を見て学んだり、分からないところを質問したりするチャンスもほとんどなくなっています。
    最近では、新型コロナ感染症予防の観点から、昼食時や休憩のときに作業員がそろって談笑する機会もほとんどなく、若手とベテランとのコミュニケーション不足に拍車がかかってしまっています。

  • マニュアルが上手く整備できない

    これまでの製造現場では、熟練技術者の技を見て覚えることが多く、時間をかけて、じっくりと技能伝承が行われてきました。
    しかし、効率とスピードが求められる現代にあっては、技術教育に時間をかけることができず、技能をマニュアル化して素早く技術教育していくことが望まれています。
    独特の技術や技能をどのようにマニュアル化していけば良いのか分からず、マニュアル作成には思いのほか時間がかかってしまっています。

  • マニュアルの活用が進まない

    苦心して作成したマニュアルや動画も、思っていたほどには活用されないことが多いようです。一つには、作成されたマニュアルが使いにくいという側面もあります。また、マニュアルだけで、技能伝承ができるわけではなく、それを進めるための教育システムや活用方針の策定も必要です。その企画立案が、おろそかになっている場合も多くあります。

技能伝承のポイントとは?

技能伝承をスムーズに進めていくためには、いくつかのポイントを理解しておく必要があります。ここでは、技能伝承を効果的に進めるポイントをご紹介します。

  • 属人化しがちな技能を形式知化していく

    技能伝承とは、熟練技術者が体得している技術やノウハウを後継者に引き継いでいくことです。
    どの企業でも、他企業にはない固有の技術・技能を持っています。これを次世代の技術者に伝承していくことで、企業の発展に結びついていくわけです。
    しかし、会社独自の技術・技能であっても、実際には熟練技術者個人に属人化していることが多く、言語化しにくい暗黙知となってしまっています。
    スムーズな技能伝承のためには、この暗黙知を「見える化」し、形式知化していくことが重要です。

  • 形式知を教育ツールに落とし込んでいく

    「見える化」した熟練技術者の「カンとコツ」は、手順書・マニュアルなどに文書化していきます。それに加えて、写真、動画、数値データとして記録しておくことも大切です。
    技術教育では、写真や動画を見せることで効果が高まります。また、形式知の数値データは、生産システムの自動化にも役立てることができます。

  • 積極的なコミュニケーションができる環境を作りだす

    技術・技能を次世代に引き継ぐためには、手順書やマニュアル、動画などの資料は不可欠ですが、それだけでは十分ではありません。
    熟練者の技術には、感性でしか伝えられない部分もあります。そのため、熟練者と若手が積極的にコミュニケーションをとれる環境の整備が大切です。
    若手と熟練技術者が共に作業する機会を増やすなど、計画的に教育プランを企画していく必要があります。

まとめ

技能伝承をスピーディに行っていくためには、現状の課題を把握し、その解決策を見いだしていくことが肝心です。スムーズな技能伝承は、企業の明日を作りだしていきます。
熟練技術者が培ってきた技術やノウハウを、確実に次世代の技術者に引き継いでいくことは、製造業を継続させ、発展させていく原動力となります。
他社の事例なども参考にしながら、経営課題として、戦略的に技能伝承に取組んでいくことをおススメします。


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