出荷の時に必要な「梱包」に資格があることをご存知ですか?

2021年 10月11日

工場で生産されたものを届けるうえで大事なのが工業包装の技術です。工業包装には、工業製品を運びやすくしたり、積みやすくしたりするなどの作業性や、固定性・緩衝性に加え、コンテナサイズに合った大きさに包装するなどの技術が求められます。
実は、この工業梱包の仕事に生かせる資格があります。安全に製品を運ぶことができるようにする梱包のプロの資格、「工業包装技能士」と「包装管理士」についてご紹介します。

(出典:工場タイムズ

「工業包装技能士」は、国家資格

「工業包装技能士」は、製品の保護を目的として、コンテナなどに格納されたときの安定性や衝撃への強さを考慮した包装を行います。また技術を磨くことによって、輸送の際の持ち運び易さや積み易さを兼ね備えた包装を行うことができます。
「工業包装技能士」は、国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県知事が実施する学科および実技試験に合格した人に与えられる資格です。(問題作成は中央職業能力開発協会が行い、試験の実施は都道府県職業能力開発協会が担当しています)
国家資格「工業包装技能士」には、1級と2級があります。

  • ・受験資格……2年以上の実務経験が必要

    「工業包装技能士」の試験には、受験資格があります。
    2級については、2年以上の実務経験が必要です。
    1級は7年以上の実務経験か、または、2級取得後2年以上の実務経験があれば受験することができます。
    なお、大学や専修学校の卒業資格や卒業学科などの学歴により、必要な実務経験年数が下げられたり、不要になるケースもあります。

  • ・試験内容……学科試験では基礎知識を問う問題が出題される

    1級と2級ともに学科試験と実技試験が行われています。
    学科試験では、包装に関する全般的な基礎知識を問う問題が出題されます。
    ・包装の材料に関する知識
    ・製品に負荷が加わったときに起こる変形と包装の関係を学ぶ材料力学
    ・製品を包装するための箱を段ボールでつくる技術、製函
    ・製品と包装材料を考慮した梱包作業の方法
    ・パッキングリストなどの輸出業務を行ううえで必要な書類に関する知識
    ・包装が完全かを試す試験の方法
    ・製品に合わせて包装を設計する製図の方法
    ・包装に関する安全面や衛生面の知識
    などから出題されます。
    実技試験では、実際に製函と梱包作業を行うことになります。決められた作業スペースで、用意された材料、道具を使用して、品質、後片付けまで全ての過程をクリアしなければ合格できないようです。
    なお、1級、2級ともに、実技試験で出題される作業方法や技術は、あらかじめ確認することができます。中央職業能力開発協会や各都道府県の職業能力開発協会のWebサイトに掲載されていますので、事前に予習し練習しておきましょう。

  • ・勉強方法……日々の業務からの学びが役立つ

    実務経験が必要な資格なだけに、日々の業務から学べることが多くあります。教科書の知識と実務の経験を合わせることで、理解が深まります。なお、試験では日ごろの業務で自分が担当している技術以外の範囲も出題されますので、幅広い業務に興味を向けて学習しておくことが肝心です。

「包装管理士」は、協会の認定で得られる資格

「包装管理士」は、製品を出荷する際に、より低コストで包装を施す技術を持った人のことで、包装物流の世界では梱包のスペシャリストとして注目されています。
国家資格ではなく社団法人日本包装技術協会によって認定される資格です。
「包装管理士」は、通常、製造側が負担している包装・輸送コストを下げることのできるスペシャリストです。さらに、最近では、環境に配慮した包装知識を持つ包装物流のスペシャリストとしての認知度も上がってきています。
テレビ番組でも取り上げられたこともあり、人気が高まっています。年間約300名が新たに包装管理士の資格を取得しています。

  • ・受験資格……22歳以上で4年以上の業務経験が必要

    受験できるのは、公益社団法人日本包装技術協会の会員であることが前提ですので、まず、会員登録をしておきましょう。日本包装技術協会のWebサイトから、会員登録をすることができます。会員には、法人会員と個人会員があり、個人でも入会申し込みをすることができます。
    「包装管理士」には年齢制限があり、22歳以上にならないと取得することができません。また、受験資格には包装関連の業務に4年以上従事していることも求められています。

  • ・試験内容……まず講義を受講し、筆記試験と面接試験を受験

    試験は、筆記試験と面接試験があります。
    筆記試験では、まず、「統括科目」「材料科目」「専門科目」の講義が、日程をずらして行われますので、これを全て受講しなければなりません。筆記試験は、この3つの講義内容から出題されます。
    ・「統括科目」
    工場内で包装を行う際に、どのような手順でどのように人を配置すれば良いかなどを計画するための技術を講義形式で学びます。包装の役割や法律など基本的な知識に加え、包装業務を効率的に行うためのシステム化の方法を学びます。
    ・「材料科目」
    包装を行う材料や容器に関する知識を講義形式で学びます。具体的には紙器・紙容器、段ボール、プラスチックフイルム、プラスチック容器、ガラス容器、金属容器、封かん結束材・接着剤など、幅広い製品と包装への対応力を身に付けていきます。
    ・「専門科目」
    生活者包装コースと輸送用包装コースに分かれ、それぞれで講義を受けます。
    さらに、それぞれのコースでも分野が分かれており、生活者包装コースには食品包装、医薬品包装、生活商品包装、パッケージデザインの分野があります。また、輸送包装コースには木箱包装設計、段ボール包装設計の二つの分野があり、演習が行われます。

    面接試験
    この3種類の講義を受けたのち、筆記試験・面接試験を通過すれば、資格を取得することができます。面接試験では、複数の試験官と約5分の個人面談を行われます。

  • ・勉強方法……日々の業務でしっかりと学んでいく

    「工業包装技能士」と同じく、試験合格に向けては、まずは日々の業務知識を習得し具体的な技術を知ることから理解を深めていきましょう。梱包の仕組みや具体的な技術は教科書よりも現場の方がわかりやすいこともあります。
    講義では、教科書が配布されます。参考書も出版されていますが、何冊もの参考書を読むよりも、自分にとってわかりやすい参考書を見つけて、教科書と合わせて繰り返し勉強することがコツです。

まとめ

梱包の技術は、製造業の品質保証や流通のコストダウンに直結する重要な技術です。「工業包装技能士」「包装管理士」ともに、キャリアアップにつながることはもちろん、包装のスペシャリストとしてさらに活躍の場を広げることができます。関連する業務に従事されている方は、ぜひ、資格獲得を検討されてはいかがでしょうか。



[参照URL]
工場タイムズ

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