各企業で若手の育成が大きな課題となっています。特に近年では製造業を中心として人材不足が深刻化しており、「採用する人を選べない」状況が常態化しています。せっかく採用できた人材をどのように育て行くのか。生産性の向上だけでなく、企業の将来にとっても重要な問題です。ここでは、製造業の若手育成を成功させるための「5つの秘訣」をご紹介いたします。

若手育成を成功させるための5つの秘訣

  • [1] まず、管理職と若手の相互信頼関係を築いていく

    中小の製造業で、今、現場の管理者やベテラン技術者になっている皆さんのほとんどは、「徒弟制度」的な環境の中で育ってきた人たちです。彼らは「技術は見て盗め」という教育環境の中で、長い年月をかけて技術を習得してきました。
    当時は、「作業手順書」や「マニュアル」もなかったため、現在、管理者や熟練技術者となっている方の多くは、今日、求められている若手の育て方を経験していません。
    そこで、どうしても若手の育成方法も自己流になってしまいがちです。また、生産活動では熟練技術者に仕事が集中してしまうため、彼らは忙しすぎて若手の教育に時間を割いていられないという現実もあります。

    製造現場では、もともと若手とベテランのコミュニケーションが少なく、コロナ禍の影響もあって、この傾向がさらに顕著になっています。そこには、相互信頼関係が生まれにくくなっています。しかし、若手技術者の育成のためには、管理職や熟練技術者と若手とのコミュニケーションを活発化し、相互信頼感を醸成していくことが、第一歩となります。

  • [2] 若手技術者に役割を与えて、責任感を持たせる

    「作業手順書」や「マニュアル」が完備されていて、OJTでトレーナーもつけている、しかし若手は思ったようには育ってくれない。という課題をお持ちではありませんか。
    若手の育成には、そうした条件面の整備はもちろん必要ですが、それだけでは技術教育はうまくいきません。
    指導者や管理者の側からは「今の若手には、やる気や真剣みが見られない」「自らが技術や知識を学ぼうとする姿勢がない」という声が聞こえてきます。
    一方、若手の側からいえば「雑用はやらせてもらえているが、肝心の技能面では、見て覚えろと言われ怒られてばかりいる」「どうやって技能を習得すればいいのか明確に指導されていないので、いつまでたっても補佐的な仕事しかできない」という声が聞こえてきます。

    そうした、管理者側と若手との意識のギャップが、若手が育たたない原因の一つであり、離職へとつながってしまう要因の一つでもあります。
    これを解消するためには、若手技術者も巻き込んで「教育体系」を作成し、管理者と若手の双方が納得したうえで、若手の業務上の役割を明確にしていくことが大事です。
    そうすることで、若手には責任感が生まれ、技能や知識の習得意欲も高まっていきます。技能教育は、上(管理者)から下(若手)への一方通行ではなく、双方の相互作用によって効果が高まっていきます。

  • [3] 若手の将来への不安を解消する

    希望に満ちて入社してきた若手社員も、会社や業界の現状を知り、社会の状況などを理解してくると、どうしても将来への不安が頭をもたげてきてしまいます。
    こうした不安を放置してしまっておくと、離職へとつながってしまいます。

    若手の将来への不安を解消するためには、「将来への道筋」をしっかりと示してあげる必要があります。つまり、会社における「キャリアパス(仕事人生の海図)」を明確に提示し、理解してもらうことが肝心です。キャリアパスは、「成長機会」の明示であり、それによって若手の「成長欲求」を引き出すこともできます。
    自立した技術者・管理者になるための道筋を明らかにすることで、若手の将来への不安を解消することができます。また、同時に若手の技術・知識習得のモチベーションも大きく向上していきます。

  • [4] 技術や方法を教えるだけでなく、その意味や目的も伝えていく

    若手の技術教育には、「作業手順書」や「マニュアル」を用意し、OJTトレーナーが作業の仕方や技術を教えていくというのが一般的です。
    しかし、ここで注意しなくてはならないのは、その作業の方法や技術だけを教えていないかということです。
    若手から質問があっても、「手順書を読めばわかるだろ」と突き放してしまってはいないでしょうか。また、極端な場合は「俺の言うとおりにやっていればいいんだ」という教え方をしているトレーナーもいます。
    これでは技術や方法を模倣するだけの「指示待ち」技術者になってしまい、若手が技術を身につけることが難しくなってしまいます。

    本当に大事なことは、なぜそういう操作をするのか、なぜこうした手順を踏むのか、なぜこの方法が効果的なのか、などその方法や技術の「意味」と「目的」をしっかりと伝えていくことなのです。

  • [5] 思い切って若手社員に人材育成プロジェクトを任せる

    これまで見てきたように、現在の管理者や熟練技術者は「徒弟制度」的な技術教育の土壌で育ってきた人が多く、自分が体験してきたその方法論を現代の若者に当てはめたとしても上手くフィットすることはありません。
    今後は、「作業手順書」や「マニュアル」、「OJT」だけに頼らない新しい人材育成方法が求められてきます。

    その一つのヒントが「若手社員による人材育成プロジェクト」の立ち上げです。入社10年前後の若手社員を選抜して、「人材育成プロジェクト・チーム」を編成します。
    そのプロジェクト・チームに、現代の若者に適した人材育成の方法を議論してもらい、決定していくのです。もちろん、若手に丸投げするだけでなく、管理職やベテラン技術者も相談相手となることは必要です。しかし、あくまでも主体は若手のプロジェクト・チームなのです。
    こうした若手のプロジェクト・チームを編成することで、社歴の浅い若手技術者の刺激になることはもちろん、プロジェクト・チームのメンバーから将来の幹部を育成することもできます。

まとめ

これからの製造業における若手育成に当たっては、意識を変えていくことが重要ですが、それだけでなく、いますぐに実行に移していくことが大切です。
ベテラン技術者が引退していく中、企業特有の技能を伝承していくことも大事です。
さらに、人材採用が厳しい状況にある今、在籍している若手社員をどのように育てていくかは、企業の将来をも左右する重要な課題です。
この記事をご参考に、ぜひ、若手社員を上手に育てていってください。



[参照URL]
カイゼンベース
https://kaizen-base.com/column/32349/