機械加工の基礎知識! 加工方法と工作機械の種類、必要な資格もご紹介
2021年 10月20日
機械加工は、部品の加工方法の一つです。機械加工では、扱われる機器や工具も多種多様です。それぞれの機械加工の知識とスキルの習得は、技術者としてのステップアップに重要な意味を持っています。ここでは、機械加工における加工方法や工作機械の種類、さらには機械加工に役立つ資格とその概要についてもご紹介していきます。
機械加工とは
機械加工とは、工作機械や切削工具を使って金属やプラスチックなどの材料を加工することを指します。使用される工作機械には「旋盤」「フライス盤」「マニシングセンタ」「研磨機」「ボール盤」「NC工作機械」などがあります。また切削工具には「ドリル」や「バイト」「リーマ」などがあります。製作図面をもとに、これらの工作機械、切削工具を用いて、材料を目的の形状にしていきます。
機械加工の特長は、同一形状のものを確かな精度で大量生産できることにあります。組立図や目的の形状の違いによって、求められる加工精度や加工手順は異なり、それに応じて、使用する工作機械も違ってきます。
機械加工は、かつては手作業が中心でしたが、今日では、プログラミングによる数値制御式の工作機械が主流となり、自動化が進んでいます。
機械加工の種類
機械加工は、大きく「切削加工」と「研削加工」に分類できます。切削加工は金属の塊から材料を切り出す加工方法。一方、研削加工は製品を美しく仕上げるための加工方法です。いずれも、除去加工と呼ばれる加工方法に位置づけられています。
[切削加工]
機械加工の代表的な方法として切削加工があります。切削加工は、刃物工具などで金属などの材料を削ったり、穴を開けたりする加工方法で、大きく分けると、転削加工と旋削加工があります。転削加工は、材料を固定して工具が回転する加工方法。反対に旋削加工は材料が回転する加工方法です。
切削加工の種類には主に「フライス加工」と「旋盤加工」の2種類があります。
・フライス加工
正面フライスやエンドミルなどのフライス工具(ドリル)を高速回転させながら材料に押し付け、目的の形状に加工する方法です。回転する切削工具を上下に動かし、材料を固定したテーブルは前後左右に動かすことでどんな形状にも仕上げることができます。
・旋盤加工
フライス加工とは逆に、工具ではなく材料を回転させ、「バイト」と呼ばれる専用工具を押し付けて加工する方法です。穴開けや中ぐり、ねじ切り、突切り、外丸削り、面削り、テーパ削りといった加工ができます。主に、軸や軸受け、ネジといった円形の部品の加工に用いられます。
[研削加工]
研削加工とは、砥石や研磨剤を使って、製品を美しく仕上げる加工方法のことをいいます。高速回転する砥石に材料を押し当てて削り取ることで、材料の表面を平滑にすることができます。砥石を用いることで刃物工具よりも加工精度は高くなっています。
高速回転させる砥石はダイヤモンドや炭化ケイ素などの硬くて小さい粒(砥粒)でできており、これらの硬い粒が刃となって材料を削ります。研削加工を行う際には「研削盤」が用いられます。
使用する工作機械の種類
機械加工で使用される主な工作機械には次のようなものがあります。
・旋盤
工作機械のなかで、最も多く使用されているのが旋盤です。旋盤では、円筒・円盤状の材料を回転させ、固定された刃物によって材料を加工していきます。旋盤で行われる加工には、「外丸削り」「テーパ削り」「面削り」「穴あけ」「中ぐり」「ねじ切り」などがあります。さらに、旋盤では「ネジ」「軸」「軸受け」など多様な機械部品を作ることもできます。
・フライス盤
フライス盤では、フライス工具を固定して回転させることによって、加工対象物の平面や曲面、みぞなどを加工することができます。フライス盤では、回転する刃物を自在に動かすことができるため、比較的自由度の高い加工ができます。使用する工具には「正面フライス」「エンドミル」「平フライス」などがあります。
・ボール盤
ボール盤は、加工対象物(主に金属)に穴をあけるための機械です。テーブルに材料を置き「ドリル」や「リーマ」などの工具を回転させて穴をあけていきます。
・研磨機
研磨機は研磨加工を行う際に使われる機械です。バイトやフライス工具ではなく砥石を使って加工を行います。このため、切削加工や研削加工に比べて精度が高く、より滑らかな仕上がりになります。
・マシニングセンタ
マシニングセンタは工具の自動交換機能をもち、「フライス削り」「穴あけ」「中ぐり」「ねじ立て」など多彩な加工を1台で行うことができるNC工作機械(数値制御工作機械)です。マシニングセンタには多数の切削工具が格納されており、コンピュータ数値制御 (CNC)で自動的に加工を行います。主軸の構造の違いによって、「横形マシニングセンタ」「立形マシニングセンタ」「5軸制御マシニングセンタ」「門形マシニングセンタ」などさまざまな種類があります。
機械加工に役立つ資格「機械加工技能士」
現在、多くの工場ではマシニングセンタを扱える優秀な技術者を求めています。そこで注目されているのが「機械加工技能士」と呼ばれる資格です。「機械加工技能士」とはどういった資格なのか、資格の概要や試験内容などについて解説します。
・「機械加工技能士」は国家資格
「機械加工技能士」は国家資格の一種で、機械加工における高い技術と知識を有していることを証明する資格です。「中央職業能力開発協会」が運営・管轄を行い、各地で資格試験を実施しています。旋盤やフライス盤などを用いた機械加工で技能レベルを証明するとともに、資格取得を通じてスキルアップを図れることから、機械加工に関わるメーカーでは取得が奨励されている資格です。
「機械加工技能士」の試験の実施団体は、都道府県職業能力開発協会です。受験を申し込む際には、都道府県職業能力開発協会から受験申請書類を取り寄せ、必要事項を記入して書類持参か郵送にて申し込みを行います。・「機械加工技能士」資格の概要
「機械加工技能士」の資格は、3級、2級、1級と上級資格である特級の4つの階級があります。特級は管理者や監督者が持っているべき技能、1級は上級技能者、2級は中級技能者、3級は初級技能者が持つべき技能レベルをはかるものです。
3級、2級、1級は筆記と実技、特級は筆記試験のみとなります。どの階級においてもマシニングセンタの広い技術と知識が試されます。
[各階級の受験資格]
各階級の受験資格は以下のようになっています。
3級 / 実務経験が6か月以上
2級 / 実務経験が2年以上
1級 / 実務経験が7年以上
特級 / 1級合格者後に実務経験が5年以上
「機械加工技能士」の資格を持つ人は、それだけ工場や企業から重要視されます。とりわけ金属加工の機器を扱う現場で尊重される傾向があります。・「機械加工技能士」の学科試験の主な科目
「機械加工技能士」の1~3級の学科試験は、共通科目と選択科目が設けられています。
また、特級は学科試験科目が異なります。
<1~3級の共通科目>
「工作機械加工一般」「機械要素」、「機械工作法」、「材料」、「材料力学」、「製図」、「電気」、「安全衛生」の8科目。
<1~3級の選択科目>
普通旋盤作業・数値制御旋盤作業・立旋盤作業…「旋盤加工法」
フライス盤作業・数値制御フライス盤作業…「フライス盤加工法」
ブローチ盤作業…「ブローチ盤加工法」
ボール盤作業・数値制御ボール盤作業…「ボール盤加工法」
横中ぐり盤作業・ジグ中ぐり盤作業…「中ぐり盤加工法」
平面研削盤作業・数値制御平面研削盤作業・円筒研削盤作業・数値制御円筒研削盤作業・心なし研削盤作業・ホブ盤作業・数値制御ホブ盤作業…「研削盤加工法」
歯車形削り盤作業・かさ歯車歯切り盤作業…「歯切り盤加工法」
ラップ盤作業…「ラップ盤加工法」
ホーニング盤作業…「ホーニング盤加工法」
マシニングセンタ作業…「マシニングセンタ加工法」
精密器具製作作業…「精密器具製作法」
けがき作業…「けがき作業法」
<特級の学科試験>
「工程管理」、「作業管理」、「品質管理」、「原価管理」、「安全衛生管理及び環境の保全」、「作業指導」、「設備管理」、「機械加工に関する現場技術」・「機械加工技能士」実技試験の主な作業
通常の旋盤作業・フライス盤作業、数値制御の旋盤・フライス盤作業・ボール盤作業・研削盤作業、プログラムの間違い判定、刃具や加工物の判定、取り付け工具の選定などがあります。
<機械加工技能士の1~3級の作業>
普通旋盤作業 1~3級
数値制御旋盤作業 1~3級
フライス盤作業 1~3級
数値制御フライス盤作業 1・2級
ボール盤作業 1・2級
数値制御ボール盤作業 1・2級
横中ぐり盤作業 1・2級
ジグ中ぐり盤作業 1・2級
平面研削盤作業 1~3級
数値制御平面研削盤作業 1・2級
円筒研削盤作業 1・2級
数値制御円筒研削盤作業 1・2級
心なし研削盤作業 1・2級
ホブ盤作業 1・2級
数値制御ホブ盤作業 1・2級
ラップ盤作業 1・2級
マシニングセンタ作業 1~3級
精密器具製作作業 1・2級・「機械加工技能士」の試験日程
技能検定の試験日程は前期試験と後期試験が設けられていますが、作業や級によっていずれかで実施され、年度によっては実施がない作業もあります。試験スケジュールは、前年の3月上旬に発表されます。
大まかなスケジュールは、以下のようになっています。
[前期]
受験申請受付:4月上旬~4月中旬
実技試験:6月中旬~9月上旬
学科試験: 7月末~9月上旬
合格発表:3級が8月末、それ以外は10月上旬
[後期]
受検申請受付:10月上旬~10月中旬
実技試験:11月下旬~2月下旬
学科試験:1月末~2月中旬
合格発表:3月中旬・「機械加工技能士」の難易度は?
「機械加工技能士」試験は、学科試験、実技試験ともに100点満点。基本的に学科試験60点以上、実技試験65点以上で合格となります。
2018年度のデータですが、「機械加工技能士」試験の各級をあわせた全体の受験者数は2万4,418人で、合格者は1万4,965人。およそ62%の合格率でした。
まとめ
工場の現場の技術者にとって、機械加工の知識とスキルの習得は不可欠です。また、それらの知識を深め、スキルを磨いていくことで、技術者として大きく成長していくことができます。これからもニーズの高まりを期待できる「機械加工技能士」の資格取得にも、ぜひ、チャレンジしてはいかがでしょうか。
[参照サイト]
工場タイムズ
WORKERS TREND