近年注目を集めているタレントマネジメントとは?
2022年 04月08日
タレントマネジメントとは、従業員の適性やスキルを最大限活用し、適切な人材開発と人材配置を目指す管理方法です。近年、日本でも労働に対する価値観の変化や、労働市場の流動化が進んでいることを背景に、注目されています。ここでは、タレントマネジメントの概要と目的、さらに導入の進め方などをご紹介します。
タレントマネジメントとは
従業員はさまざまな「タレント=能力・資質・才能」を持っています。その「タレント」を評価・把握し、人事管理の一部として一元管理。その情報に基づいて戦略的に採用・配置・育成などを行い、組織のパフォーマンスの最大化をめざす人材マネジメント手法のことを「タレントマネジメント」と呼んでいます。
タレントマネジメントは、人財の流動化が激しいアメリカで、優秀な人材の定着を目的として1990年代に考え出された手法で、海外では一般的でした。日本では、2011年ころから急激に注目を集めるようになり、導入する企業が年々増えています。
タレントマネジメントでは、優秀な人材だけをタレントとして扱うのではなく、何かに特化した能力や、その人が持つ雰囲気などまでも含めて、一人一人が持つ能力を重要な経営資源としてとらえていきます。
住所、年齢、学歴、職務経験など、従来の基本的な人事情報に、こうしたタレント情報を追加して活用することで、企業は大きなメリットを得ることができます。
タレントマネジメントが誕生した背景は
タレントマネジメントは、1997年にマッキンゼーが提唱した「War for talent=ウォー・フォー・タレント」から広まったとされています。「War for talent」は、「人材獲得・育成競争」と訳されています。この提唱なかでは、経済社会環境の急激な変化により、従来のような社内組織だけの「人材管理」にとどまらず、社外も含めた開かれた世界で人財を獲得していく時代が来たと主張されています。
今日では、テクノロジーの急速な発展によって、企業で働く人材にはより高度な能力が求められています。このため、企業が求める人材も専門分化しており、何かに特化した能力や専門的な能力を持つ人が求められています。つまり、個人の能力にフォーカスして、それを最大限に活かしていけるかどうかが、企業の業績を左右する時代となってきたのです。
タレントマネジメントの目的とは?
タレントマネジメントの目的は、従業員それぞれの能力を適材適所で活かし、業績の発展につなげていくことにあります。
タレントマネジメントでは、個々の従業員が経験してきた業務に、本人が未来を見据えて取り組みたいことなどを踏まえて、配置や業務を決めていきます。このため、従業員にとっても、自分の理想に近いキャリア形成やスキルアップが実現しやすくなります。
[タレントマネジメント導入のメリット]
・人材の適正配置
タレントマネジメントを導入することで、人材の適正配置が実現します。従業員の持つタレントを把握しておくことで、役職に適した人材を社内から迅速に配置することができます。特に、新規部門の設立やプロジェクトチームを発足させるときなど、その適正にマッチした人材を素早くピックアップすることができ、スピーディなビジネス展開が可能となります。
・次世代リーダーの育成
マッキンゼーが提唱した「War for talent」によって、企業では優秀な人材を育てることが重要視されることになりました。タレントマネジメントでは、個々人が描いているキャリアビジョンが把握できます。その結果、その人が目指したいビジョンに向けた最適な研修を実施することができます。また、その人のビジョンに適した業務をアサインすることもできます。こうして、最適なキャリア支援を実現することができます。
・最適な人材の採用や配置転換
日本では、少子高齢化が一段と進行しており、企業の採用活動にも影響が出ています。企業としても人材募集にあたっては、求める経験やスキル、素養を明確にして募集していく必要があります。タレントマネジメントを活用すれば「募集ポジションの人材要件」や「配属先に必要なタレントの傾向」などを明確にできるため、採用活動をより円滑に進めることができます。また、個人のスキルや思考、価値観を把握することで、誰をどのポジションに配属すればその人の力を伸ばせるのかが分かり、最適な配置転換が可能となります。
タレントマネジメントの進め方
タレントマネジメントは、次のようなステップで進めていってください。
1) 目的の明確化と課題の細分化
タレントマネジメントという人材政策を展開する前に、まずは、企業活動の目標を明確にしておく必要があります。多くの企業で、経営理念やビジョン、ミッションなどが設定されていますが、これを達成するということはどのような状況になることなのか。もう一度掘り下げて考えてください。また、目指すべき状態を実現するために解決すべき課題をみつけ、その課題を細分化していくことも重要です。そのうえで、それぞれの要素ごとにどのようなタレントの人材が必要なのかを定義していきます。
2) 人材情報の「見える化」
次に自社の従業員の人材情報を可視化します。氏名・所属・資格・学歴などの基本データに加えて、経歴・目標・評価などの人材情報を一元化してデータにします。人材データを「見える化」することで、能力に応じた人材登用や、その部署に足りないタレントの採用計画が練りやすくなります。
3) 採用・育成計画の策定
一元化した人材データをもとに、採用・育成計画を策定していってください。自社が求める人材は、外部から採用する必要があるのか、社内から登用できるのかを判断します。しかし、採用した人材や新たに配属した人材が、求めるタレントに届いていない場合もあります。そのような時には、業務経験を積ませたり、社内研修を通して能力のキャッチアップを進めていくなどのアフターフォローも重要です。
4) 成果の評価と柔軟な対応
タレントマネジメントを導入した後は、定期的に成果を確認していきます。人材の配置前後で、企業業績にどのような変化があったのか、客観的な数値に基づいて分析することが大切です。もし、期待通りの実績が出ていない場合は、能力の発揮を阻んでいる原因は何かを探っていく必要があります。現場の意見を踏まえながら、職場環境や制度を見直し、必要であれば能力開発の研修なども実施してください。
タレントマネジメントでは、異動はつきものです。配属先で実績を積めなかった人が、違う業務では活躍してくれることもあります。企業も従業員も柔軟な思考で配置を考えていくことが大切です。5) 社内に浸透させるための広報活動や研修の実施
タレントマネジメントでは、データを常にアップデートしておかなければなりません。しかし、従業員がその目的を理解していなければ、個人情報を集めることに不信感を持つ人も出てきて、情報の収集もスムーズにいきません。これを解消するためには、タレントマネジメントの目的をできる限り開示し、従業員に広報していく必要があります。また、評価する側の役職者に、タレントマネジメントの目的やデータ入力の方法、活用の仕方などをレクチャーしておくことも重要です。そのためには、運用マニュアルの整備も不可欠です。
まとめ
タレントマネジメントは、人材情報の立体化であり、一元化です。多面的な視点から、人材を評価し、本人の希望や目指している未来の姿も加味して、業務展開の目標に最適な配置や人材採用を実現していきます。
しかし、組織開発や人材育成、リテンションマネジメントはすぐに成果が出るという性格のものではないため、定期的なチェックを行い、改善していくことも重要です。タレントマネジメントに取り組み、人材を活用して、ぜひ、業績のアップを実現してください。