ドイツの製造業はなぜ強い?日本が学ぶべきポイントは?
2023年 12月29日
ドイツは、国民全員が自国をものづくりの国だと自覚しているほどのものづくり大国です。
そんなドイツですが、どうして自他ともに認めるほどのものづくり大国になったのでしょう。この記事では、なぜドイツの製造業が強いのかについて触れていきます。
目次
製造業大国ドイツの教育システム
ドイツは古くから製造業大国であり、国民全員がものづくりの国だと認識している国です。
そのため、ものづくりで生きていくという強い意志を国民ひとりひとりが持ち、国としてもものづくりを支援するためのあらゆる制度や仕組みを用意しています。
例えば、10歳の段階で将来の進路が決まるというデュアルシステムという仕組みがあります。
どのような進路があるのかというとホワイトカラー(頭脳系の労働者)になるのか、ブルーカラー(肉体系の労働者)になるのかという2つの進路です。
ホワイトカラーへの道を選んだ場合、約3割の人間が大学に進み、残りは専門学校へと進学します。
この専門学校は、製造業の現場で職長になることを目的としたものづくり専用の専門家を養成する学校です。
一方でブルーカラーは、『マイスター』の養成学校に通うことになります。
ドイツでマイスターになり、優れた才能を発揮できれば大企業の社長よりも高い報酬を得ることができる場合もあり社会的なステータスも高いです。
また、マイスターの組合は強い政治力も持っており国内でも影響力を発揮しています。
さらには、大学もものづくりを支えている機関のひとつです。
アーヘン、ベルリン、ミュンヘンのドイツ三大工科大学と言われる大学では、大学収入の約3分の1が民間企業との共同開発になっています。
中小企業などは、研究開発部門を維持するのが大きな負担となりますが大学などと共同開発をすることによりその負担を軽減することができます。
ドイツは儲からない分野を整理した
日本の製造業が低迷している原因は、製品競争力にあるとされ、製造業の復活を望むなら、競争力を向上させる必要があります。一方、ドイツが高い競争力を維持している理由は、国家を挙げた産業シフトにあります。
ドイツも90年代に競争力低下の課題に直面しましたが、日本企業が価格競争に巻き込まれたのに対し、ドイツ企業は高付加価値な分野にシフトするビジネスモデルの転換を行いました。
ドイツは、容赦なく付加価値の低下した分野を切り捨て、高い競争力を持っていた分野から撤退し、新しい分野での高付加価値を見つけ出す巧妙な戦略を取りました。
たとえば、船舶の建造については後発国に譲り、代わりにディーゼル機関の設計ライセンスを提供するモデルに転換し、高い利益率を実現しています。
ドイツ企業は船舶分野でのデファクトスタンダードを握るなど、新しい分野へのシフトやサービス業化を進め、医療器機やバイオなどにも進出し、IT企業のSAPを通じてデジタル化を推進しています。
このように儲からない分野を整理することによってドイツは変化する市場に適応し、高い競争力を維持しているのです。
産業クラスターが起きやすい
ドイツには、欧州最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構という機関があります。
ここでは、中小企業だけではなく大企業とも共同で研究開発が行われています。
日本にも支部がありますが、日本の中小企業が製品開発を依頼することはほとんどなく価格を提示すると高いという評価を受けてしまうそうです。
このような事態が起きている背景としては、日本の中小企業は下請けや系列関連の枠組みに入り親会社から技術指導などを受ける中で技術力を高めてきました。
こうした理由から、技術提供に費用がかかる事が無く技術に対して対価を払うという概念が世界的に見て不足しています。
一方でドイツの企業であるBMWは、部品調達を行う際でも調達基準を満たしていれば世界中のサプライヤーからでも購入するスタイルを取っています。
そのため、各サプライヤーは入札で勝ち続ける必要があるため製品開発や技術開発が必須です。そこで必要となるのがフラウンホーファー研究機構などの機関との連携による研究開発です。
また、ドイツでは企業間連携を伴う研究開発も活発です。企業の考え方としてもオープンイノベーションは当たり前という感覚があるためそもそもオープンイノベーションという言葉が無いくらいです。
大学や研究機関の研究者も業界団体の集まりに対して、積極的な参加を行い研究費の獲得に伴う活動を行います。
このように企業側と研究者側が積極的な交流、接触を行うドイツでは産業クラスターが起こりやすく結果的に国内の技術力向上にも繋がっていくという好循環を起こしています。
日本が見習うべきポイント
日本の中小企業としては、国外の展示会への積極的な出展が重要であり展示会を通じて製品の世界的な位置付けを理解し、海外での需要や評価を確認することが大切です。
また、日本側はドイツの商工会議所のように国際的な事務所を設け、丁寧なサポートを提供することも行っていくべきでしょう。
成功する中小企業の基本は、売れる製品を開発しそれを積極的に海外で販売することです。
日本企業もこの基本に忠実になり、海外での販路を広げる努力が必要です。従来の下請けやグループ会社などの系列にとどまるだけではなく、親企業からの注文以外にも独自のビジネス展開を模索することが求められます。
大きく拡大している円安の状況を活かして、海外での事業の裾野を広げていくことは日本経済の再生にも繋がっていくでしょう。
参考URLドイツのものづくりはなぜ強いのか 日本の中小企業が学べることとは? – 特集 – 情報労連リポート (joho.or.jp)
製造業大国ドイツはレベルが違う? 日本企業との深刻すぎる“差”とは |ビジネス+IT (sbbit.jp)