品質不正はなぜ起こる?どんな対策が必要か
2024年 07月19日
昨今では、さまざまな品質不正が発生しておりメディアにも取り沙汰されています。
この記事では、そんな品質不正を防ぐための対策について解説していきます。
目次
品質不正はなぜ起きてしまうのか
品質不正が起こる主な理由としては、「納期を守るため」や「歩留まりを上げるため」といった組織の目標達成への強いプレッシャーが挙げられます。
これらのプレッシャーは、従業員が真面目に職務を遂行しようとする中で生じるものであり、個人の利得を目的とした不正とは異なるものです。
まず、納期を厳守する必要がある場合、品質管理のプロセスに時間を割く余裕がなくなり、結果的に不正が行われることがあります。
組織全体のスケジュールを守るために、一部の検査を省略したり、基準を満たさない製品を出荷したりすることが行われます。
このような行為は、一見すると組織への忠誠心からくるものであり、組織全体の利益を守るための行動と捉えられることが多いです。
また、歩留まりを上げるために、不正が行われることもあります。
歩留まりとは、製造過程での生産効率を指し、高い歩留まりを維持することはコスト削減や収益向上に直結します。
そのため、一部の製品が基準に達していない場合でも、それを隠して出荷するという不正が以前から発生していました。
このような行為も、組織全体の利益を優先するために行われるものであり、従業員個人の利益とは直接関係しません。
さらに、周囲の環境や組織文化も品質不正の発生に寄与します。
例えば、「昔から行われている」「これまで顧客からクレームを受けたことがない」といった言葉が広まっている場合、不正行為が常態化しやすくなります。
このような環境では、不正行為への心理的ハードルが低くなり、新たに不正を行うことへの抵抗感が薄れてしまう可能性があるでしょう。
以上のように、品質不正が起こる背景には、組織の目標達成へのプレッシャーや従業員の忠誠心、組織文化が深く関わっています。
個人の利得を目的としない不正行為は、特に従業員にとって心理的な負担が少なく、不正を誘発しやすい環境を生み出しています。
このため、組織全体で倫理観を高める取り組みや、不正行為を未然に防ぐ仕組みづくりが重要です。
品質不正はどのように防げばいいのか
品質不正はどのように防げばよいのでしょう。
ここからは、品質不正を防ぐための4つの具体例について解説していきます。
監視
監視とは、従業員の行動を常にチェックすることを指します。
これは、不正行為の抑止力として非常に有効です。
例えば、工場で行われる検査や作業が適切に実施されているかどうかを常に監視することで、不正行為を防ぐことができます。
監視には、人による直接的な監視だけでなく、システムやセンサーを活用した技術的な監視も含まれます。
監視の具体例は下記のとおりです。
- システム監視: 検査を複数回実施する必要がある場合、システムがその実施状況を自動的に記録し、不適切な行為が検出された場合にはアラームを発報する。
- ビデオ監視: 作業エリアにカメラを設置し、従業員の行動を監視し不正行為が行われていないかを確認する。
- 定期的な監査: 内部監査や外部監査を定期的に実施し、品質管理の状況をチェックする。
行動制限の導入
行動制限とは、従業員が不正行為を物理的に行えないようにする制限を設けることです。
これにより、不正行為の実行を難しくし、発生を防ぎます。
行動制限には、柔軟なものから強固なものまでさまざまなレベルがあります。
行動制限の具体例は下記のとおりです。
- 検査の制約: 必要な検査回数を実施しないと製品が治具から取り出せないようにする。
- データの保護: システムがデータの改変を防止し、改変が検出された場合にはアラームを発報する。
- アクセス制御: 特定の作業やデータにアクセスできる権限を厳格に管理し、不適切な行為を未然に防ぐ。
見える化の推進
見える化とは、作業状況やデータを視覚的に表示し、誰でも容易に確認できるようにすることです。
これにより、異常や不正行為に気づきやすくなり、不正の発生を抑制する効果があります。
見える化の具体例は下記のとおりです。
- データのヒストグラム表示: 出荷検査のデータをヒストグラムとして表示し、異常な値の発生を容易に確認できるようにします。
- 作業の記録: 作業時間や数量を記録し、いつ誰がどのような作業を行ったかを明確にします。
- 品質の見える化: 製品の品質状態をリアルタイムで表示し、異常が発生した場合にはすぐに対応できるようにします。
モラルの向上と教育
従業員の順法意識やモラルを向上させることも重要です。
品質不正を防ぐためには、従業員一人ひとりが高い倫理観を持ち、不正行為に対する強い抵抗感を持つことが求められます。
モラル向上の具体例は下記のとおりです。
- 倫理教育: 定期的に倫理教育を実施し、品質不正の重大さや影響について従業員に理解を深めさせます。
- 内部通報制度: 不正行為を発見した場合に匿名で通報できる制度を設け、従業員が安心して通報できる環境を整えます。
- 表彰制度: 品質向上や不正防止に貢献した従業員を表彰し、モラルの高い行動を奨励します。
まとめ
品質不正は、お客様の信頼を著しく損なう行為です。
発生させない環境を作ることを念頭に入れて改善を行っていきましょう。
参考URL品質不正はなくならない、対策の鍵は「見える化」にあり | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
品質不正はなぜ起きる?|長期投資だより-さわかみ投信のWEBマガジン- (sawakami.co.jp)