トヨタ式を学ぶとき、必ず出てくる仕組みの一つに「見える化」があります。
すでに一般的にもなっている「見える化」という言葉ですが、
トヨタの生産現場から生まれた言葉で、異常があればラインを止める、
などの問題の在り処をみんなに「見える」ようにして問題を解決する取り組みのことを言います。
最近では生産現場だけでなく、教育現場などでも使われるようになっており、
様々な場面で積極的に取り入れられている印象があります。

しかし、中には本来の「見える化」とはかけ離れた、
ただの「見せる化」になってしまっている例も少なくないようです。
「見える化」とは、言い方は少し乱暴かもしれませんが、
いわば「現行犯逮捕」のようなもの。
犯人(原因)を逮捕し、その場で改心(改善)することが目的なのです。

こちらの記事に出てくる工場の話がとても良い例です。
どんなに綺麗で読みやすいカラーグラフを作っても、
在庫が山のように積まれていては何の意味もありません。
納品予定日はいつだったのか、注文を営業が受けたのはいつなのか、
作ったのはいつでキャンセルが出たのはいつなのか…
その場にいる人々がこれらの質問に答えられなければ意味がありません。

学生時代を思い返してみると、似たような経験を思い浮かべられる人もいるのではないでしょうか。
授業の内容を、様々なペンを駆使して綺麗にノートにとったとしても、
内容を理解して質問に答えられなければ意味がありませんよね。
綺麗にノートを取る事はデザインであり、理解とはまた別の次元の話です。
一見、走り書きのように見えるノートでも、作った本人がきちんと理解していて、
文字さえ読めれば問題はないのです。
実際、教育現場でも綺麗なまとめノートは意味がない、
というのは現在常識になりつつあるようです。

大切なのは問題を解決すること、現場を改善すること。
「見える化」という言葉ばかりが先行してしまい、
他人に見られても恥ずかしくないものをデザインし「見せる」という方向に
走ってしまっているものは「見える化」ではないのです。

大切なのは「問題を解決したい」という強い欲求です。
「問題」ですから、みんなで共有するのは少し恥ずかしい、
と感じる状態のこともあるかもしれません。
しかしそれを共有し、みんなの知恵を集めて現場を改善することが
「見せる化」の本来の目的です。
恥ずかしいことが出てきた時、すぐに見える化できる空気も、
現場にはとても大事な要素なのかもしれません。

(via ビジネス+IT