構造の変革のなかで求められている ポジティブ・メンタルヘルスとは?

2021年 11月12日

今、企業のメンタルヘルス施策の考え方として、「ポジティブ・メンタルヘルス」という概念が注目されています。「ポジティブ・メンタルヘルス」とは、働く人々の心身の健康度を高め、生産性の向上につなげることを目指す概念です。従来のメンタルヘルスでは、不調をいかに防ぐか、不調者の発生にどう対応するかに主眼が置かれていました。これに対して、「ポジティブ・メンタルヘルス」は、個人の成長や自己肯定感などを重視しています。

健康増進と生産性向上を両立させる「ポジティブ・メンタルヘルス」

近年では、社会情勢の変化や働き方の変化を受けて、職場のメンタルヘルスは、企業にとってますます重要な課題となっています。
世界保健機構(WHO)は、2017年の世界メンタルヘルスデーのテーマとして「職場のメンタルヘルス」を取り上げました。このなかで、企業の経営者や管理職は、メンタルヘルス対策を通して、従業員の健康の増進と職場の生産性向上を実現していく責任があると述べています。

2015年には、労働安全衛生法が改正され、従業員50人以上の事業所では、すべての従業員に対して、毎年1回、ストレスチェックを行うことが義務化されています。こうした法改正を受けて、働き方改革の施策の一環として、積極的に従業員の健康支援に取り組む企業が増えています。
こうした中で、従業員のメンタルヘルスを重視する企業も増えてきていますが、もう一歩進んで、健康増進と生産性の向上の両立を目指す「ポジティブ・メンタルヘルス」にも注目が集まっています。

ビジネスのデジタル化やイノベーションの創出が求められる時代にあって、製造業においても、より一層、生産性を向上させるためには、生産ラインの稼働率を上げるだけでなく、労働の質的向上が求められています。そのためには、従業員が生き生きとやりがいを持って働ける環境の整備が不可欠で、その実現のためには「ポジティブ・メンタルヘルス」は欠かすことのできない概念です。

「ポジティブ・メンタルヘルス」の基本は、ワーク・エンゲイジメント

「ポジティブ・メンタルヘルス」を進める中で、「ワーク・エンゲイジメント」というコンセプトが生まれてきました。これは、仕事に対してポジティブで充実した感情を持続的に抱いている心理状態を指す心理学用語です。

従来のストレス対策は、ストレスを引き起こすような「負の要因」を取り除くことに主眼が置かれていましたが、「ワーク・エンゲイジメント」では、さらに進んで負から正への転換を目指しています。
この「ワーク・エンゲイジメント」を高める「正の要因」を増やしていくことによって、従業員の心身の健康と生産性の向上を図っていくことで「ポジティブ・メンタルヘルス」が実現されていきます。
「ワーク・エンゲイジメント」は、「ポジティブ・メンタルヘルス」の基本となっています。

「仕事の要求度」を低減し、個人のメンタル面の強みを強化していく

「ワーク・エンゲイジメント」を向上させるためには、「仕事の要求度」を低減させるとともに、「個人の資源=従業員の個々人が持つメンタル面での強み」を伸ばし、「組織の資源=組織としての強み」を強化させていくことが求められています。
これによって、従業員の心身の健康と個人・組織のパフォーマンスにプラスの影響をもたらし、結果として、強い動機付けとなります。

個人が持つメンタル面での強みとは、自己効力感(ある行動を上手く実行できるという自信)や自尊心、楽観性、粘り強さなどを指しています。また、組織としての強みとは、上司の支援、経営層との信頼関係、成長の機会に満ちた職場環境などを指しています。
こうした個人の強みと組織の強みが強化されることで、心理的なストレスが軽減されるというメリットも生まれてきます。さらに、職場が活気あふれるものとなり、健康増進と生産性の向上が同時に実現できるようになります。

まずは、組織の強みを見つけるアセスメントから

企業として「ポジティブ・メンタルヘルス」に取り組むためには、まず、職場環境の実情を把握することからスタートするのが良いでしょう。職場のストレス要因と個人の資源・仕事の資源のアセスメントから始めていきましょう。

2012年に、厚生労働省研究班から仕事の資源についての調査も含まれた「新職業性ストレス簡易調査票」が公表されています。こうしたアセスメント手法を活用して、組織の強みを把握したうえで、社員参加型のワークショップでディスカッションを重ね、アクションプランに落とし込んでいきます。

アセスメントでは「あらさがし」をするのではなく、メンタルヘルスにおける組織の強みを見つけ、それを伸ばしていくための方策を考えていくことが肝心です。組織の強みを「見える化」し、従業員で共有していくことで、モチベーションが向上し、結果的に長続きするメンタルヘルス施策を組み立てていくことができます。

まとめ

健康で働きやすい職場づくりは、これまで、ほとんどの企業で進められています。その施策を見直したり、拡充させることで、「ポジティブ・メンタルヘルス」施策へと進化させることができます。新しいことを始めるのではなく、これまでの努力の延長線上で「ポジティブ・メンタルヘルス」の考え方に立脚したメンタルヘルス施策を組み立てていくことができます。
小さな取り組みから初めて、成功体験を積み重ねていくことによって、ぜひ、長続きするメンタルヘルス施策を実現していってください。



[参照URL]
THE ADECCO GROUP / 株式会社日立システムズ

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